
ブランドマーケティングにおけるカスタマージャーニーの設計法
“届けたいブランド体験”を、“届く体験”に変えるために。
たとえば、あなたの会社のサービスがどれだけ優れていても、それをお客さまが知らなければ意味がありません。
そして「知った」からといって、すぐに信頼されるわけでも、購入や申し込みにつながるわけでもありません。
ブランドマーケティングの本質は、「お客さまとの関係性をどう育てるか」にあります。
その土台となるのがカスタマージャーニーの設計です。
この記事では、ブランド視点からカスタマージャーニーをどのように捉え、どう設計していくのが効果的かを、実践的な視点で解説します。
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カスタマージャーニーとは?
カスタマージャーニーとは、お客さまがブランドや商品・サービスと出会い、購入・体験し、ファンになるまでの一連の行動・心理の流れを地図のように可視化したものです。
よくあるステップは次のような流れです。
・認知(Know):ブランドやサービスの存在を知る
・興味、関心(Like):気になる/比較対象として候補にあがる
・理解、検討(Think):詳しく調べ、導入を検討する
・購入、利用(Do):実際に選び、購入または導入する
・評価、共感(Love):満足し、共感や信頼につながる
・拡散、再利用(Share):人に勧める/再購入・リピートする
ブランドにとって重要なのは、この流れのなかで一貫した体験価値をどう提供し続けるかです。
なぜブランドマーケティングに「ジャーニー設計」が必要なのか
ブランドをつくるうえで欠かせないのは、「認知率」や「ロゴの印象のよさ」だけではありません。
大切なのは、お客さまとの接点すべてがブランドの世界観や価値を的確に伝えているかどうかです。
たとえば、こんなケースを考えてみてください。
・広告では「上質で信頼できる企業」と謳っていたのに、実際のサービスページがチープで読みにくい
・会社案内では「お客さま第一」と語っているのに、問い合わせフォームの対応が遅く冷たい
・採用パンフレットでは「チームワーク重視」と書いてあるのに、SNSでは社内の雰囲気がまったく見えない
これでは、お客さまの体験の中でブランドの信頼が徐々に損なわれてしまいます。
だからこそ、ブランドの視点でカスタマージャーニー全体を見通し、各接点に最適な体験を設計することが欠かせないのです。
カスタマージャーニー設計の進め方
それでは、ブランドマーケティングにおけるカスタマージャーニーの設計ステップを見ていきましょう。
ブランドの価値(バリュー)を明確にする
ジャーニー設計におけるスタート地点は、ブランドが届けたい価値を言語化することです。
・私たちは、何を大切にしているのか?
・どんな体験をお客さまに届けたいのか?
・他社と違う“らしさ”は何か?
ここが曖昧なままジャーニーを設計しても、各タッチポイントがバラバラになり、統一感のないコミュニケーションになってしまいます。
ペルソナを定義する
誰のジャーニーを描くのか?を明確にするのがペルソナ設計です。
特にBtoBの場合は、以下のような粒度で具体化するのが効果的です。
・所属企業の規模や業界
・担当業務、役職
・抱えている課題やKPI
・情報収集のスタイル(展示会派?ネット検索派?)
・稟議の進め方(決定権は誰にあるか?)
ここでのポイントは、「感情の動き」まで含めて想像すること。
たとえば「急ぎのプロジェクトで業者探しをしていて、失敗できないので信頼性を重視している」など。
タッチポイントと課題を洗い出す
ペルソナの感情の変化と行動を軸に、各フェーズでの「接点(タッチポイント)」と「課題(ペイン)」を洗い出します。
フェーズ |
タッチポイント |
顧客の課題 |
認知 |
Web広告、展示会、紹介など |
何を選べばいいかわからない |
興味 |
サイトTOP、SNS、パンフレット |
他社と何が違うのか知りたい |
検討 |
詳細ページ、事例紹介、資料請求 |
実績があるか、信頼できるか |
導入 |
問い合わせ、見積もり、営業対応 |
スムーズに進められるか不安 |
体験 |
サービス利用、サポート対応 |
期待通りの効果があるか? |
拡散 |
お礼メール、SNS連携、紹介キャンペーン |
誰かに勧めたくなる理由があるか? |
このように、フェーズごとの接点と心理状態を具体的に可視化することで、「何をどう改善すべきか」が見えてきます。
各タッチポイントにブランド体験を設計する
ここからが本番です。
「どの接点で、どのようなコンテンツやツール、対応が必要か?」を具体的にプランニングします。
たとえば──
・パンフレットでは、ブランドの世界観がひと目で伝わるデザインに
・Webサイトでは、CTAの言葉づかいや導線設計にブランドの価値観を反映
・営業資料では、単なる機能紹介でなく、共感やストーリー性をもたせる
・導入後のフォローでは、ブランドトーンに沿ったサポート資料やお礼状を用意
私たちはこうしたジャーニー全体に目を配りながら、「体験設計」×「ブランド表現」を両立させる設計を大切にしています。
成功するジャーニー設計のための3つの視点
最後に、ジャーニー設計でよく陥りがちな落とし穴と、その回避法をまとめておきます。
①「つくる順」ではなく「伝わる順」で設計する
制作物の工程順で考えず、お客さまの出会いの順に視点をおくことが重要です。
② 情報過多より「適量」を意識する
丁寧に説明しようとするあまり情報を詰め込みすぎると、伝わらないブランド体験になってしまいます。
③ ブランドが“顔”を見せる場をつくる
価格や機能だけでなく、会社や人の想い・姿勢が見えるタッチポイントを意識的に設けることが、信頼や共感につながります。
まとめ
ブランドマーケティングにおけるカスタマージャーニーの設計は、「お客さまの心の動き」に寄り添う設計図づくりです。
伝えたいことだけでなく、「どうすれば伝わるか?」を考えること。
そして、どの接点でもブレないブランドの姿を見せること。
これこそが、単なる販促ではなく、“選ばれ続けるブランド”を育てるための基盤になると、私たちは捉えています。